心臓移植の歴史 【6】古代から続く移植の試み
- Yumiko Hosoda
- 7月27日
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章6:古代から続く移植の試み
この発想は、少なくとも2000年前の古代インドにさかのぼる。スシュルタは鼻形成術において皮膚を用いたことを記録している。16世紀には、イタリアの外科医ガスパーレ・タリアコッチが同様の技術で名声を得た。彼は戦争で損傷した鼻を、上腕から採取した皮膚弁を用いて再建したのである。
結果はしばしば良好だったが、タリアコッチは患者自身の組織を使ったときにのみ手術が成功することに気づいた。他人からの移植片はすぐに活力を失い、壊死してしまう。「他人の皮膚を使うのは極めて困難で、ほとんど不可能である」と彼は述べている。「個人であることの本質が、他者への移植を阻んでいるのだ。」タリアコッチはすでに、移植の核心的課題である「拒絶反応」に直面していたのである。

【用語解説】
壊死(えし)
酸素や栄養の供給が絶たれると、細胞や組織は生きていくことができず、機能することができなくなります。その状態を壊死と呼びます。
拒絶反応(きょぜつはんのう)
免疫反応のひとつです。ウイルスや細菌から外敵から身をまもるために免疫反応が体の中に存在します。ウイルスに感染した細胞は、その後ウイルスが体内で増殖してしまいます。それを防ぐために、ウイルスに感染した細胞を死滅させる免疫システムが体の中に備わっています。人間に他人の組織や臓器を移植した時に、体の免疫システムはそれを異物と判断して、移植した組織を死滅させようと働きます。それが拒絶反応です。


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